近代的な理論

人はなぜ寝るのでしょうか?もしあなたが年寄りになって安楽死ができたとしたら、人生のうち約30年間も睡眠に費やしてきたことになります。でも、この疑問に対して本気で考えたことはありますか?

科学者たちは未だにこの謎を解くことができていません。しかも人間の脳が睡眠中にも活発に働いていることが発見されたのは20世紀に入ってからのことなのです。

この記事では睡眠について知っとくと明晰夢を見るのにも役立つ情報を書いていこうと思います。

睡眠サイクル

人間を含め、すべての哺乳類と鳥類には二つの睡眠フェーズが存在します。

  • レム睡眠
  • ノンレム睡眠

そして睡眠には5のステージにそれぞれの生理学的、神経学的、心理学的要素があります。
そのステージがつながって一つのサイクルになります。

1960年後半にRechtschaffenとKalesという二人の科学者たちが、典型的な睡眠サイクルというのを定義しました。こんな感じです。

睡眠サイクル

1回のサイクルは90分から110分間かかります。なので8時間の睡眠をとった場合、5回のサイクルが行われるということです。

これを見ると、寝ている間のほとんどがノンレム(NREM)睡眠だということがわかります。レム睡眠は睡眠サイクルの一番最後にあり、最初は10分間程度で終わってしまいます。しかし、睡眠が深まるにつれて、ノンレムサイクルが短くなり、レム睡眠が長くなってきます。朝方のほうが夢を覚えている可能性が高いのはそのためです。(夢はほとんどの場合レム催眠中に見ていますが、稀にノンレム睡眠中でも見ることがあるようです)

では、各ステージの要素を見ていきましょう。

ステージ1 NREM:軽い眠り

脳波がアルファ波(8-12Hz)からシータ派(4-7Hz)に下がります。
筋肉から力が抜け、痙攣しやすい状態になります。幻覚のようなものが視界に入り、自覚を失います。

ステージ2 NREM:軽い眠り

脳波にランダムな乱れが加わります。筋肉をコントロールすることができなくなり、体の動きがロックされます。

ステージ3 NREM:低速波睡眠

脳波が、最も長い波長のデルタ波(0.5-4Hz)に変わります。このステージでは夢は見ず、夢遊病の人が歩きまわるところです。

ステージ4 NREM:低速波睡眠

デルタ波がより強調され、さら深い眠りに入っていきます。ここが最も深い眠りだと言えます。

REM睡眠

サイクルを締めくくるレム睡眠では、脳波が突然活発になり、ベータ波(12-38Hz)になります。瞼の裏では目が動き回り、痙攣も起きやすくなります。ほとんどの鮮明な夢はこのステージで見ています。

生理的リズム

睡眠サイクルは生理的身体時計によってコントロールされています。これは体内にある時計で、脳はこれを使って体温やいろんな成分を放出するタイミングを調整しています。

脳が神経伝達物質のアデノシンを放出すると、眠気が遅い、体温が下がります。同じように朝方に体内時計の目覚ましがなると、脳からまた別の神経伝達物質を放出してあなたを目覚めさせるのです。

普段早起きしている人が朝ゆっくり寝ることが難しいのはこのためです。脳から体を起こすための物質が送られてきてしまうのです。この生理的体内時計が存在するということが、それだけ毎日健康的な睡眠をとることが重要だと証明しています。

それで、結局人はなぜ寝るの?

睡眠サイクルを理解していただいたところで、次は睡眠の機能について説明できます。
なぜ私たちは人生の3分の1も謎の世界で過ごしているのでしょうか?

睡眠は、哺乳類、鳥類、爬虫類、両性類、魚類において自然な状態です。ですが、必要とする睡眠時間には、驚くほど差があります。

こうもり:20時間
ライオン:13.5時間
実験用ねずみ:13時間
家庭向けの猫:12.5時間
ヒヒ:9.5時間
人間:8時間
ごんどう鯨:5.5時間
アジア象:3時間
ノロジカ:3時間
キリン:2時間

この研究結果は睡眠について、進化に基づいた理論が生まれるきっかけとなりました。一つの理論は食物連鎖の中で下のほうにいる動物は、身を守る必要性が高いのでその分睡眠時間が短いということです。しかし、また別の理論では、寝ている間は丸まって静かで暗いところに隠れているので、寝ているときのほうが安全だと、反対のことを言っています。

しかし、この両方の案に対して穴があります。それは、私たちは睡眠が極端に足りていないとき、体が強制的にその分の睡眠をとろうとすることがわかっているからです。それが敵に襲われる可能性がある状態でも寝てしまうのです。そのように、リスクの高い状況でさえもとってしまう睡眠とは一体何者なのでしょうか。

4つの主な理論

理論1 睡眠は休むためのものである

私たちは一日中、活発的に生物的な行動をしています。
これには多大なエネルギーが必要とされ、寧ろ起きている時間というの方が一時的な状態かもしれません。この時間に人は食べ、繁殖します。そのアクティブな状態から身体的にも精神的にも安心をするために睡眠があるという考えです。

この理論を後押しする事実として、寝ている間のみオンになる遺伝子が一部存在しています。それは、精神的健康に直結していて、精神分裂病や鬱病を防ぐ力があるとのことです。

理論2 睡眠は癒しのためのものである

睡眠には身体的な治療をする力があります。
これは常に行われる体の免疫力、神経、骨、筋肉の成長と復活により証明されています。

ねずみの実験で、睡眠を減らすとやけどの完治までの時間が延びることがわかっています。
更に、睡眠を削られると新陳代謝にも影響が及びます。睡眠をとっておくことによって、本当に必要なときのためのエネルギーをためておくことができます。

でも、冬眠をした後の動物も、穴からでき来たあとにまた睡眠をとる必要があります。ただ単純に暗闇の中で休んでいるだけでは睡眠としてカウントされず、きちんと脳の意識をシャットダウンする必要があります。

理論3 睡眠はものを覚えるためにある

睡眠中、人間の脳は重要な情報は残して、不要な情報は忘れるこによって、脳内を整理してくれます。

Turner et alの実験で、40人の人に一日26分間だけの睡眠を与え、記憶力や思考力を試すテストを行いました。結果的に、実験が行われた4日間において、通常時に比べて成績が38%低下していたことがわかりました。REM睡眠をとらないと、記憶するタスクや問題の解決策を考える能力が低下するのです。

その他の実験からも、手順的記憶(何かのスキルを実行する記憶)もREM睡眠によって成績が左右することがわかっています。同じく、平叙記憶(事実に対する知識)は低速波睡眠を十分にとっているかで成績が変わります。

理論4 睡眠は夢を見るためにある

人は誰でも毎晩夢を見ます。(覚えていなくとも見ています)夢とは、潜在意識と経験からなる表現です。夢を見ることはとても大切で、もし極端に夢を見る機会を減らしてしまうと、人間は起きている間でも実際に夢を見るようになります。

夢を見ることはREM催眠の副次的結果のように考えられますが、夢が人が睡眠をとるための重要な理由だとも考えられませんか?もうそうであれば、なぜ私たちは夢を見るのでしょう?
それについては次回書きます。

最後に

睡眠の真相はまだ未知です。睡眠サイクルと、睡眠が脳と身体にもたらす影響の一部はわかっています。ですが、「なぜ私たちは寝るのか?」について完全なる答えは見つかっていません。
まだまだ研究する余地があるフィールドです。