夢遊病とは

夢遊病とは、寝ている間に勝手に身体が動いて、家事をしたり、冷蔵庫を漁ったり、電話をしたり、酷いケースでは殺人までしたりするという奇怪な睡眠障害です。
本人はそのことを一切覚えてないので、誰にも気づかれないまま夜な夜な夢遊をしている人も多いと思われます。

夢遊病の主な原因として、

  • 睡眠遮断
  • 感情問題
  • 過剰なストレス
  • 風邪や病気

などが考えられます。

夢遊病は、夢の中でしている動きをしていると思われがちですが、実際はそうではありません。
ほとんどのケースで夢遊病はノンレム睡眠中に起こり、この間に夢を見ることは非常に珍しいことです。
なので、明晰夢を見ている間に夢遊する確率は極めて低く、もし夢遊を始めたらすぐに目が覚めるはずです。

人口の約18%が夢遊をしたことがあるという調べです。
他の睡眠障害に比べて、夢遊だけは女性よりも男性のほうがかかりやすいです。
更に、子供や若者は寝ている間の80%も低速波睡眠をするので夢遊をしやすいです。
夢遊は、両足を同時に動かしたときに始まります。これが、身体が覚えている動作をする引き金になるのです。

これまで報告されていたケースの中には、夢遊で食事をしたり、お風呂に入ったり、おしっこをしたり、着替えたり、車を運転したり、殺人を犯したりというものさえあります。
夢遊する人は目を開けているので、目の前は見えています。
アニメのように、両手を前に伸ばして歩くというよう感じではありません。

寝言

寝言も夢遊に似ている睡眠時随伴症です。
ノンレム睡眠のサイクルの間の僅かに目が覚めている状態に発生します。
また、レム睡眠の間にも寝言を言うこともあり、この場合は夢で言っているセリフを言ったり状況を説明していることになります。

寝言は下記のような他の睡眠障害にもリンクしています。

レム睡眠行動障害 (RBD)
大声で感情的な寝言をいう

夢遊病
寝ている間に身体が歩き出す

夜驚症
寝ている間に叫び声をあげる

睡眠関連摂食障害 (SRED)
寝ながら食べること

寝言は幼い子供によくあることですが、大人になるにつれて減っていきます。大人になっても頻繁に寝言を言い続ける人は5%くらいだと言われています。

Dion McGregor氏は、1960年代にルームメイトが彼の寝言を録音し始めてから一躍有名人になりました。
Dionの寝言は非常に詳しく状況を説明していて、気球に乗って月まで旅する夢など楽しいエピソードがたくさんあり、寝言だけのCDアルバムも発売しています。

夢遊病の対処法

夢遊は、詳しいことを知らない人からするとちょっと怖い現象です。
もし身近な人が夢遊をしているところを発見したときのコツをいくつかご紹介します。

まず、本人が寝床に戻るようにそっと誘導してみましょう。
でも、本人が今やっていることを終わらせたがるかもしれません。例えば部屋の埃をはたいていたり。
そういう場合は自分も手伝ってからベッドに誘導します。翌朝本人は何も覚えてないので、恥ずかしがる必要はありません。
もし何をしようとしているのかもわからない場合は、何がしたいのか聞いてみましょう。返事が遅かったり、何も言わないこともあります。

突然、観葉植物に小便をかけ始めたり、見えない食べ物を食べるフリを始める等のおかしい行動を始めても驚く必要はありません。
本人な普段起きているときに身体が覚えた動作を自動的にしているので、今いる場所が何処なのかということをあまり把握できていません。

夢遊病の殺人

衝撃的ですが夢遊をして人殺しをしてしまったというケースはこれまでに68件報告されています。
これらのケースを元に法律が頻繁に改定され、
夢遊だったと証明できた容疑者達は無罪判決を受けるケースもあります。

現在の裁判では、意図的にコントロールできない行動で発生した被害の責任は持たないものとされています。
これには自動的に行動してしまう発作、痙攣、反射反応、振盪中の出来事や、夢遊も含まれています。
中でも最も話題になった夢遊殺人ケースをご紹介します。

ケニス・パークス

ケニス・パークス

1987年、パークス氏は既婚で生後5ヶ月の子持ちの23歳でした。義理の母と仲が良く、「紳士な巨人」と呼ばれていたそうです。
前の年の夏に、ギャンブルにハマり、借金を抱えることになってしまいました。負けたお金の穴埋めをするために、彼は家族の貯金と会社のお金をこっそり使うようになりました。しかしすぐにそれがバレて会社をクビになりました。
パークス氏は賭博常習者更正会に参加し、姻戚にすべてを打ち明けることを決め、翌週末に会いに行く予定を立てました。

そして5月23日に事件は起きました。
パークス氏は姻戚の家まで23kmを車を運転し、家に侵入しました。
そして義理を父と義理の母を鉄の棒で殴り殺したのです。
そして警察署まで運転し、血まみれの姿で「自分の手で誰かを殺してしまったかもしれない」と自首をしました。

パークス氏の裁判
パークス氏の唯一の弁護は彼が事件の最中ずっと寝ていて何も覚えてないということでした。
誰も彼のことを信じはせず、睡眠の専門家も彼の発言を強く疑っていました。
しかし、いくら調査をしても専門家達は夢遊以外の説明をすることができませんでした。
パークス氏のEEG脳波を調べると、睡眠障碍者のなかでも極めて特殊なものでした。
彼の動機はなく、彼の発言は7回のインタビューを通して驚くほど首尾一貫していました。
発言で語られたタイミングもすべて一致していました。
そして本人のEEG脳波を偽装することは不可能だとされ、彼は無罪判決を言い渡されました。

スコットファレーター

スコット・ファレーター

1997年に、ファレーターは20歳の妻を惨殺しました。
ナイフで44回刺し、庭のプールに押し倒したのです。
ファレーターは妻の頭を水中にから上がらないように押さえているところを目撃されていました。
殺人を終えたファレーターはきていた服を車のフェンダーの中に隠し、パジャマに着替え、出血している自分の手の処置をしました。更に彼は凶器をタッパーの中に入れ、ブーツと靴下と共にゴミ袋に入れました。
その後、またベッドに戻って眠ったのです。

スコット・ファレーターの裁判
専門家達は、睡眠障害による殺害だと弁護しましたが、ファレーターの取った行動は夢遊中に行うものとしてはあまりに複雑すぎると起訴されました。
つまりファレーターは証拠を隠して自分の怪我の処置をするところまでの洞察があったということになります。
長い裁判の結果、判決は謀殺で有罪となり、ファレーターは仮出獄無しの無期懲役を言い渡されました。

最後に

夢遊中の殺人は恐ろしいです。
倫理に関係なく無意識が勝ってに色んな選択をしてしまうということですから。
それに、もし本当の殺人鬼が自分は夢遊病だという弁護をしたら、彼は無罪になりうるのでしょうか?
それが本当に夢遊だったかどうかを確実に見極める術はあるのでしょうか?

幸い、夢遊の殺人は非常にレアなケースです。
そして夢遊は、明晰夢とは一切関係がありませんので、安心して明晰夢を見る方法を実践していただければと思います。